『書店ほどたのしい商売はない』

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雑誌の本屋特集で好意的に取り上げられる本屋は、大体決まっている。都内でいえば、東京堂書店神田本店、ジュンク堂書店池袋本店、ブックファースト渋谷店、銀座の教文館青山ブックセンター、あとは千駄木往来堂書店などの小さな街の本屋、ヴィレッジバンガードをはじめとしたニューウェーブ系の本屋。
それが、とても不満だ。
いつもいつも企画も内容も同じような感じで読者なめやがって…という不満だけではない。


先に名前をあげた本屋は、本好きの人間にとっては「そこへ行くためだけの理由で、わざわざ電車に乗って出かけて行く本屋」なのだろう(私も、どの店にも年に最低数回は行く)。そういう本屋そういう本屋は、本好きの人間にとっては、「いい本屋」だとは思う。
でも、だ。しかし、だ。そういう本屋だけが本屋じゃない。
圧倒的多数の本屋は、そうではない。そういう酔狂な客を、相手にしてはいない。「本を買うために、わざわざ遠出するほどでもないだろう」と思っている人たちを相手に商売をしている。その代表例は、文教堂書店チェーン。このチェーンは本好きには評判があまりよくないけれど、「本好き」を切り捨てる(と書くと、言いすぎか。店によっては、面白い店もあるし)ことによって成功した。「売れる本はどこでも売れる」から、ベストセラーとかベストセラー候補本ばかりを並べる……。


書原の商売のやり方は、そのどちらでもない。東京堂のように「わざわざそこに行くためだけに出向く」客を相手にしているわけでも、文教堂のように金太郎飴書店なわけでもない。
書原というと、丸の内線南阿佐ヶ谷駅前にある杉並本店ばかりが話題になるけれど、どの店も(といっても、泉ガーデンと高井戸と虎ノ門ぐらいしか行った記憶がないけれど)、そのまちにあわせた展開をしている。「わざわざ来る」人ではなく、そのまちで働いている人、住んでいる人をみて、商売をする。


で、この本には、そのノウハウがつまっている……と書きたいところだけれど、そんなに書いてあるわけではない(インタビューというより対談に近い形式ということもあるけれど、それを書いちゃったら、ねぇ。。。)。ただ、(現役、あるいは元)書店員が書いた書店本*1の中では、一番勉強になる(と思う)。

*1:この手の本って、自慢話とグチが多くて、あまり参考にはならない。グチりたくなる気持ちもわかるけれど、グチっているだけじゃ、何も変わらない。