早稲田文学 vol.7 2006年11月号

重松清による坪内祐三インタビュー「愉しい文学」の、こういう言葉に目が留まる。

[重松]情報が淘汰されたあと、雑誌に残るもの、残しておかなきゃならないものはなんでしょう?
[坪内]「感情」じゃないかって気がする。「感情」というと、すぐ「感動」に置き換えられちゃうけれど、「感動」は情報の一種だと思うんだ。単純だから。そうじゃない、「ざわつき」みたいなものが「感情」なんだよ。ちょっと話が飛ぶけど、俺が中原昌也さんの小説をすごいと思うのは、読むとなんか変な感情が起きるからなんだ。昔の村上春樹も、世間がイメージするような「爽やか小説」じゃなくて、なんかちょっと変な感情が刺激されるものだった……ああいうのは、活字でしか味わえない世界なんだと思うな。

[坪内]僕のなかでどこかでポップに対する信仰がまだ消えていないんだと思う。「ポップであれば売れるんじゃないか」というね。「en-taxi」も、40代がつくる「ポップ」を出せば10万部とか行くんじゃないかと思ったの(笑)。でも「ポップ」と「メロディアス」は違うから、すごい気持ちのいいメロディアスなナンバーじゃなくて、昔だったら近田春夫さんが楽曲提供した歌謡曲みたいなやつ。そういうのをつくれば売れると思ったんだけど……「もうポップやっても売れないんだな」って。

言葉にするのは難しいし、カタチにするのはもっと難しいんだけど、ポップな総合誌をいつかつくりたいと思っている。