雑誌にも2種類ある。

東京堂書店で、亀和田武×坪内祐三トークショー

退屈男さんが書いていなかったところで印象的だったのは、新潮社の女性誌(?)「旅」の話。
坪内氏が、『この雑誌を盗め!』92ページ「「YS-11と『旅』は似ている」に触れ、この時点では亀和田さんも思っていなかっただろうが、いま振り返れば……云々。


以下は、あくまで私の個人的解釈だが――。
新潮社は、当初、可処分所得が結構高い中高年世代をターゲットにした雑誌をつくりたかったのではないか。また、誌面においてはヴィジュアル版「小説新潮」、「とんぼの本」シリーズの雑誌版をつくろうとしたのではないか。
だが、実売部数が思うようにいかなかった。このままでは赤字が嵩むばかり……。広告収入を伸ばして赤字幅を減らし、将来的には収益の上がる媒体にしたい。
では、女性誌にしようとして、いまの「旅」がある。
表紙周りにも、そして中面にも、外資ファッションブランドの名が踊る。
でも、だ。いったい、誰がこんな雑誌読むのか(って読者に失礼な言い方だが)。


「雑誌にも、六本木ヒルズのような高層ビルと雑居ビルがある。……。『週刊新潮』は非常に雑居ビル的」と坪内氏。「金券ショップが何軒もあったり……」と亀和田氏。


その例えを借りれば。
このビルは、もう築数十年。店子は減っていく一方。新しく借りようなんて人は、ほとんどいない。このままではジリ貧である。
いま持っている資産を有効活用するには、どうしたらいいか。という話になった場合、大雑把にいって、対処案は5つある。


A案「じゃあ、いったん更地にしちゃいましょうか。それで、音羽の『レオン』ビルみたいに、ブランドのお店がたくさん入るビルにしましょうよ」(ex新潮社「旅」)
B案「更地にするのは大変だ。それはそれで膨大なカネがかかる。建物自体はしっかりしているんだから、改装だけですませましょう。オシャレな感じにして、いまどきのナウい人たちにもビビビッとくるようなものにしましょう。そういうイメージのビルなら、自動車メーカーやファッションアパレルが店出してくれるから。」(ex小学館「Lapita」)
C案「ただ金儲けのために出しているんじゃない。社会的使命なんだ、この雑誌を存続させることは!何があっても雑誌を刊行し続ける」(ex岩波書店「世界」)
D案「いいよいいよ、うちのビルは、そういうの。十分古いけど、今でもテナントちゃんと入っている。一時期の勢いはないけれども、なんとかやっていけるじゃないか。耐震構造もしっかりしている。関東大震災があっても、倒壊しないだろうしさ」(ex月刊「文藝春秋」


こんご10年間で、どんどんA案B案が採用されるようになってくるだろう。
「オシャレで高級感ある建物(=雑誌)にすればいいって、不動産屋(=広告代理店)が言っているじゃないか。ウチもそうしよう」
そういうビルじゃんじゃんじゃかじゃかつくっても、入居者はそんなにいるわけじゃないから、いつか頭打ちになる(たぶん数年以内に)。
雑誌の世界が、テレビみたいなことやってもショーガナイと思うんだけれど。
1000万相手にしてるんじゃない。多くて数十万、少なくて数千部の世界なんだから、高層ビルばかりどんどん建ててもね、と私は思う。
←我ながら、文章が雑すぎる。やはり、雑誌として「残る」ときと、web上に「書き散らす」あるいは「メモする」ときでは、文章を書く上での意識が全然違うな