『帝都東京・隠された地下網の秘密』

帝都東京・隠された地下網の秘密 (新潮文庫)

帝都東京・隠された地下網の秘密 (新潮文庫)

この本の著者・秋庭俊さんはテレビ朝日の記者だったせいか、この本もテレビっぽい内容。
田原総一郎曰く、「活字には論理性がなきゃダメだけど、テレビに論理はいらない」。『帝都東京……』には論理性があまりなく、ホントのところどうなのかが論証されていない(都市伝説の粋を出ない)。ただ、これ、川口浩の探検隊とかやっていたどこぞの放送局が番組化したら面白く見られたろうに。

この本に出てくる、著者の小学校の同級生で、中堅ゼネコンの設計士の「中川」が実にいいキャラなのである。ホームズにとってのワトソン君、明智小五郎にとっての小林少年……。本書は、この中川あってこそである。この中川が、名言・迷言を連発する。たとえば――。

著者が自説を話し、〈おそらく、これ以上の証拠は出てこないと思う〉(その証拠については読んで確認してください)と言うと、中川はこういう。

「これで信用しないヤツは、説明されたって信用しないだろ」
中川が高い声で笑った。

これ名言だ。何かのときに使わせてもらおう。


また、もっとも私を楽しませてくれたのはこういうところ。

私は過去のジャーナリストの著書を読んでいた。政府のウソや犯罪を立証した記録はかなりの数にのぼっている。相手が政府であるだけに公式の記録などはなく、「AはBとしか考えられない」「AはB以外の可能性はない」という論理になっていた。アメリカ、イギリス、フランス、イタリア、ドイツ、『田中角栄研究』でもやはり同様だった。あとはそれぞれの国の風土でハードルの高さが決まるらしく(以下略)

この〈論理〉から推測するに、秋庭さんは、ロズウェル事件のものとか、ケネディ暗殺関係のものとか、UFO関係とか、そういう本を、〈ジャーナリストの著書〉として読んでしまったんでしょうなぁ。
「政府のウソを立証した本は、『AはBとしか考えられない』『AはB以外の可能性はない』という論理になっていた」って言うじゃない。でも、それ、ジャーナリストの著書じゃなくて、トンでも本ですから、残念!(古いな、もうこれは)。

アメリカ、イギリス、フランス、イタリア、ドイツ、『田中角栄研究』〉いいなぁ、この並び方。国名のあとに書名が来るって(んで、なぜロシアや中国は入ってないんでしょうかね)。

ついでにツッコんでおくと、立花隆さんのものは、「公式の記録」に基づいたものだと思うんですが。。。


秋庭俊さんには、〈帝都東京・地下〉シリーズだけじゃなくて、〈「AはBとしか考えられない」「AはB以外の可能性はない」という論理〉で、〈政府のウソや犯罪を立証した記録〉をバンバン書いてもらいたい。
UFOをはじめとしたオカルト本の「たま出版」さん、秋庭さんの本をどんどん出してくださいな。