ジュンク堂池袋本店

■「界遊」001号 http://d.hatena.ne.jp/inamo-dereda/20101231
敬愛する読書家の一人から「『界遊』って、『HB』をライバル視しているんですかね?」と聞かれ(東京堂書店で一度手に取ったときには気が進まなかったが、、感覚を信頼している人から指摘されたので気になって)、つい買ってしまう。
巻頭の「田中和生×仲俣暁生」のトークショーから読み進めると、特集コラム「僕たちに組み込まれた物語」の武田俊「あの夏、『フードコート』で」で手がとまる。「フードコート」というと、私はショッピングセンターではなく、焼きそばやフランクフルトを売っていた、ホームセンターのそれを思い出す。
そして、ダイエードムドムバーガー。私がよく連れて行ってもらったダイエーの「フードコート」の壁には、家族がクルマでドライブしているなど、まさにアメリカン・ウェイ・オブ・ライフが絵に描かれていた。
ダイエーイトーヨーカドーなど、どんな店にもそういうコーナーがあったように記憶する。で、そこにあるのはチェーン店ではなく、個人経営と思しき、かき氷専門店やお好み焼き専門店があった。


私はもうちょっと年長の世代で、武田氏のように愛知県出身ではないから、「たとえば、地方の中学生たちが初めてお気に入りの異性と二人で学校の外で会おうとする時、その場所としてもショッピングモールは機能する(これは僕もそうだった)」という経験は共通するけれど、固有名詞に対する感覚がずいぶん異なる*1
ジャッキー・チェンとかが出ていそうなアクション映画を見て、ゲームセンターでUFOキャッチャーをプレイ」というのはわかるのだけれど、「ソニープラザヴィレッジヴァンガードなどを巡った後は、『フードコート』で昼食をとる」というのは、ちょっと。ソニプラやヴィレヴァンがショッピングモール*2に進出するのって、もう少し後じゃないかなとか。ソニプラやヴィレヴァンって、どこのショッピングモールにもありそうだけれど、実はない*3
できれば、「フードコート」にあった具体的な店名を記してほしかった。あの東京ミッドタウンにだって「フードコート」はある。だが、入っている店は一見同じようでいて、実は全然違う。地方のショッピングモールに入っている店は、チェーン店だけではない。また、「フードコート」には、たこ焼きやお好み焼き、アイスクリームなど、非日常的な食べ物を扱った店が多かったのではないか。だからこそ、ある種、祝祭的な空間として機能していたので、デートで寄ることもあった――メシ食ったり、ドリンクバーでダラダラするなら、マックやサイゼリアなどのファーストフードかファミレスだろうに、わざわざ人目につきやすい「フードコート」を選ぶというのは、縁日や祭りみたいな感じを醸しだしている空間だからではなかろうか。
そこにこそ、何かがあると私は思う。そこらへんの固有名詞や体験をもっと読みたかった。じゃ、そのデートで何を食べたのか? スパゲッティは、口のまわりが汚れるかもしれないと思って、食べないだろう(中学生の初デートでは、ね)。うどんやそばも、趣味が疑われるかもしれないから、選ばない。じゃ、ハンバーガーはどうか……こういうところの葛藤を読みたかった。
あ、そうそう。ついでに。このあいだ、新宿三丁目ゴールデン街で飲んでいたときに、たまたまその場に居合わせていた女性が「地方のジャスコに行くと、テンション上がるよね。(ファッション)ブランドがなんでも入っているし」と言っていた。
でも、この辺のことを書く人って、あまりいないような気がする。1980年代に田中康夫が書いたようなことを、2000年代のいま書ければ結構面白いと思うんだけれども。
ま、なにわともあれ、次号も楽しみにしてます。

*1:中部地方で中高生の時期を過ごした人にとって「スガキヤ」は何かしら思い入れがあるものだとか、そういう飲み会で耳にしたことぐらいしか、知らない

*2:そもそも、「ショッピングモール」っていう言葉自体、千葉県の幕張にカルフールができたときぐらいから言われはじめたんじゃないったかしら

*3:ヴィレヴァンはともかく、ソニプラ(いまの「プラザ」はブランド戦略に意識的だったから、郊外のショッピングモールなんぞには出店しなかった――せいぜい丸井止まりで、それ以下の店に進出していたのはプラザ本体ではないストアブランドじゃないか――ように記憶しているだけれど、どうだろう