仲俣暁生「本当の『雑誌の時代』」(「STUDIO VOICE」2007年1月号)

実現のための方法論ぬきで理想のみを言ってよければ、小説とノンフィクションのどちらもが載る、文芸誌でもなくジャーナリズムの雑誌でもない、言葉の雑誌をつくりたい。喩えていうなら、もし今の時代にカポーティの『冷血』のような作品を書こうとする人間がいたとして、その文章を載せるのにもっともふさわしい佇まいをもった雑誌、とでもいおうか。
政治も文学も経済もそこで語ることのできる、一流の文章だけが載る雑誌。そこに書くことが、ライターにとっての名誉でありうるような雑誌。ライターという職業が尊敬され、経済的な自立しうる基盤となる雑誌。それが私の創りたい雑誌であり、読みたい雑誌であり、そこで自分が書きたい雑誌である。