「新潮社一〇〇年」

面白い。
あの伝説の編集者・斎藤十一は〈親しい人に先立たれる度に、レコードを掛けて聴き入ったという〉のがモーツァルトの「フリーメーソンのための葬送曲」だとか、売れてなさそうな「ENGINE」の広告収入は1億円だとか、朝日新聞に掲載された新潮社の三八広告を集めた「新潮社三段八割広告の記録」という小冊子があるということとか……。

中でも面白かったのが、「純文学書下ろし作品」をめぐる逸話。

何よりも作家の側が、書下ろしという形式に適応するのが難しい、という現実があった。(中略)しかし書下ろしでは、一年先、二年先の完成まで、なかなか緊張を保ち続けられず、その間収入が跡絶えるのも辛い。(中略)
そこで出版部では、いろいろと方法を考えた。先ず最低保証部数を一万部と決めた。大きな売れ行きは見込めない作品でも、一万部は刷るのである。更に通常は一律一〇パーセントの印税を、部数によるスライド制にした。一万部までは一三パーセント、三万部までが一五パーセント、それ以上は一七パーセント。

最近出てないんじゃないかな、「純文学書下ろし作品」。あの箱が好きだったのに。
それに月報(もどき?)がついているのも、ヨカッタ。小林信彦『怪物がめざめる夜』をはじめとして、月報は文庫に収録されていないんだよなぁ…