さようなら、「間違いだらけの自動車選び」
- 作者: 徳大寺有恒
- 出版社/メーカー: 草思社
- 発売日: 2006/01/01
- メディア: 単行本
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このCMをはじめてみたとき、「ああ、もうメーカーもユーザーも、自動車選びに言葉を必要としなくなったのだなぁ」。いまの日本の自動車メーカーは、たとえどんなクルマでも、そこそこに燃費がよく、そこそこにカッコよく、そこそこに手頃である。たとえ、どんなクルマを選んだって、後で「間違った選択をした」と悔やむことは、まずない。むしろ、新車で購入したユーザーは、乗れば乗るほど、自分の選択眼の的確さ、そして愛車の素晴らしさを実感するかもしれない。
もう言葉は必要ないのだ。批評や解説なんてウルサイのである。「ヨーロッパ車には味がある」だとかいって、ベンツやBMWやフォルクスワーゲンやシトロエンやプジョーやルノーなどの“ガイシャ”は、(多少の例外はこそあれ)絶賛し、トヨタやホンダが手がける(日本のユーザーにとっては使い勝手のよい)ミニヴァンにはダメ出しをするよーな、そういう批評はいらないのである。自分がいいと思ってんだもん、それでいいじゃんよぉ〜……ユーザー側もそう思っているんじゃなかろうか、となんとなく私は思った。
そのフェアレディZのCMが放映されていた去年の冬、『間違いだらけの自動車選び』は刊行されなかった。その理由は「徳大寺さんの体調があまりよくないから」と聞いていた(じゃあ、なぜ徳大寺氏は「NAVI」「ENGINE」などには登場していたのか)。
そして、2006年1月、ようやく『間違いだらけの自動車選び』が刊行された。1年半ぶりの刊行。で、手にとってみると「最終版」とある。
えっ? 最終版?
内容は、いままでの『間違いだらけ…』の選り抜き版…。
この本の中に、なぜ今回の本で最終版となるのか、という明確な理由は書かれていない。
私は氏のレクサス評を、そしてNSX生産中止に踏み切ったホンダに対する氏の論評を『間違いだらけ…』で読みたかった。なのに……。
おそらく、実売部数がここ数年減少の一方だったのだろう。2000年から年2回刊行されるようになり(コレで部数減少分の売上をカバーしようとしたのだろう)、2005年夏は定価据え置きでオールカラーに。それでもやはり…ということで、今回が最後になったのだろう。
もう言葉はいらないから。情報だけならネットでいくらでも拾える。自動車評論家じゃなくたって、クルマのよさはわかる(というか、実は、素人にはクルマの悪さはわからないから、「このクルマは悪くない」→「むしろイイ」と思ってしまいがちだ)。だから、1500円くらい払って自動車評論家の本を買う必要性はない。
そういうふうにユーザーが思うようになり、『間違いだらけ…』が売れなくなってきたのではなかろうか。
言葉はいらない、か。
「ウザイ」「やばい」「かわいい」、3つくらいの形容詞があれば構わない……、私はそうはは思わない。