『名門高校人脈』

その時、僕は、神田をぶらぶら歩いていた。高校3年生になったばかりであり、そろそろ受験勉強を始めなければならなかったのだが、「大学受験用の参考書を買いに行く」という大義名分(?)にかこつけて、神田をぶらぶらしていたのだった。

向こうからやって来た見知らぬ男が、いきなり僕を叩きのめしたのである。僕には何の準備もなかった。

ある本屋の店頭で、偶然見付けた晶文社の『古くさいぞ私は』のヴァラエティ・ブックに、どんなに烈しい爆薬が仕掛けられていたか、僕は夢にも考えていなかった。

それが坪内祐三との出会いだった。坪内との出会いをきっかけに、私は少しずつ読書家として目覚めていった。
『古くさいぞ私は』の中でも、とりわけ面白く読んだのは「卒業生御三家に見る校風の研究」である(初出は「東京人」1994年3月号、スタンレー鈴木名義)。

出身大学別でその文学の違いを語ることが可能なのは、一九五〇〜六〇年代、せいぜい引っ張ってきたとしても三島由紀夫自死した一九七〇年代までである、という事実です。
それ以降の文学を、出身大学でくくってジャンル分けして論じることは極めて難しい。(中略)
こういう問題に頭を痛めていたある日、ワタシは、金子一平に出会いました。
「それはね、今や文学は、出身大学でなく、出身高校で見るんだよ、出身高校で」と言う金子一平は、いわゆる出身高校オタクでした。
「文学者だけでない。芸術家、文化人、タレント、芸能人、彼らの出身高校を見ただけでオレは、彼らがどんな芸風を持っているかわかる(以下略)」

 そして、金子一平はこう指摘する。
浅田美代子、山口いずみ、夏目雅子は「東京女学館(通称ヤカタ)の出身。だからどことなく(本当は違うかもしれないけれど)、お嬢さんっぽい」と指摘し、一方、三田佳子賀来千賀子、安田成美らの出身校である女子美付属は「こちらの方はお嬢様といっても、笑顔の下に打算を秘めた、いわゆる田中康夫のいう三越女」。(これから先は、『古くさいぞ私は』を読んでください)。

へぇ〜。なるほどねぇ…。
「出身高校で見る」というのは面白い。「出身高校オタク」である金子一平(こと坪内祐三)氏による、出身高校本が出るといいなぁと楽しみにしていた。
だから、光文社新書から『名門高校人脈』が出ると知ったときは、かなり嬉しかった。

名門高校人脈 (光文社新書)

名門高校人脈 (光文社新書)

この本、あの人があの高校出身なのかぁというトリビア的な面白さ(アダモちゃん島崎俊郎が、超有名進学校出身だったりとか)に溢れている。

たとえば。
広島県広島市にある修道高校出身者には、吉川晃司、神足裕司、平山郁男、日本IBM社長大歳卓麻、亀井静香らがいる。

亀井は高校二年生のとき、定期券を買うために必要な通学証明書発行の有料化に反発、学校側に抗議するためビラ配りをして放校処分を受けている。

また<亀井静香(同校中退―都立大泉高校―東大・経―警察庁)>というがある記述から放校処分を受けたあと、中退したのだろう
地元の高校を中退し、東京都立高校に編入した頃、亀井少年の胸中はどのようなものだったのだろう。

また、筑波大学附属高校出身の片山さつきは…

ちなみに夫の龍太郎は、ゴルフクラブやライターで知られるマルマンの御曹司で、破綻寸前の同社を立て直し、現在は産業再生機構執行役員としてカネボウ社外取締役になっている(なお、片山の前夫は参議院議員舛添要一)。

舛添要一と結婚したことがあったのか、片山さつき