太田出版

太田出版のサイトで、朝倉喬司『自殺の思想』、大西巨人『縮図・インコ道理教』が出版され(てい)ることを知った。

朝倉喬司『自殺の思想』

*私たちにとって「自殺とはいかなる生の条件なのか」を歴史的に追求した424ページの力作ノンフィクション。

・誰もが自殺の濃い影の中を生きている
犯罪の社会史の第一人者である朝倉喬司が、長年の探求を集大成した畢生の大作『自殺の思想』は、近代という歴史社会を生きる私たちにとって、自殺こそが「生の基底的条件」であることを様々な自殺事件の検証を通して明らかにする、自殺関連本の決定版である。今を生きる人に必読の一冊。

明治36年、夏目漱石の教え子・一高生の藤村操が日光華厳の滝に投身自殺して空前の自殺ブームを巻き起こして以来、1986年の岡田有希子現象、そしていじめ自殺に至まで、有名無名の数多い自殺者たちが死をもって提示した「生への究極の問い」を、著者は徹底検証する。近代という歴史社会との関連の中で、自殺の思想圏域を際立たせることにより、自殺の意味を真に引き受ける回路を提示する、類例なき探求の書。

大西巨人『縮図・インコ道理教』

*戦争国家へ傾く2005年の今、『神聖喜劇』の巨匠が満身の力をこめて発表するメッセージ小説がついに刊行された。

<題意>
「皇国」すなわち天皇制国家は、神道系であり、インコ道理教は、仏教系である。神道系と仏教系との相違ならびに規模の大小の差異はあれ、両者は、いずれも宗教団体・無差別大量殺人組織であり、前者の頭首は、天皇にほかならず、後者の頭首は、深山秘陰にほかならぬ。
 かくて、「宗教団体インコ道理教は、『皇国』日本の縮図である。」という命題と、「宗教団体インコ道理教にたいする国家権力の出方を、人が、<近親憎悪>なる言葉で理会する。」という命題とは、いかにも彼比照応する。

<献題>
 本来、なにものも、いかなる官威権力も、「いつも死を控えて生きる奇怪な毎日」を各人に強要強制することはできない。それは定言的命法である。
「宣戦布告」のある政治的殺人は、「戦争」と呼ばれ、「宣戦布告」のない政治的殺人は「人殺し(テロリズム)」と呼ばれる。それが、既往(現在まで)の通俗概念であって、前者は「いつも死を控えて生きる奇怪な毎日」を国民各個に強要強制する。「国家」という「官威権力」のこういう理不尽な(上記の定言的命法に正面から背反した)やり口は、抜本的に是正されるべきである。
「宣戦布告」の有無にかかわらず、どちらも、それが政治的殺人であることにおいて、一様に「人殺し(テロリズム)」であり、したがって、「人殺し(テロリズム)反対」は、すなわち「戦争反対」でなければならない。
「戦争」ないし「国民国家」に関する通俗概念の徹底的打破克服の道を確立すること、ここに、二十一世紀初頭の中心的課題(当為)が、実存する。