村上春樹の最新作

東京奇譚集

東京奇譚集

「日々移動する腎臓のかたちをした石」にこういう一節がある。

「何よりも素晴らしいのは、そこにいると、自分という人間が変化を遂げることです」と彼女はインタビュアーに語った。「というか、変化を遂げないことには生き延びていけないのです。高い場所に出ると、そこにいるのはただ私と風だけです。ほかには何もありません。風が私を包み、私を揺さぶります。風が私というものを理解します。同時に、私は風を理解します。そして私たちはお互いを受け入れ、ともに生きていくことに決めるのです。私と風だけ――ほかのものが入り込む余地はありません。私が好きなのはそういう瞬間です。いいえ、恐怖は感じません。一度高い場所に足を踏み出し、その集中の中にすっぽりと入ってしまえば、恐怖は消えてしまいます。私たちは親密な空白の中にいます。私はそういう瞬間が何よりも好きなのです」

村上春樹にとって<そこにいると、自分という人間が変化を遂げる><高い場所>はどこだったのだろうか。

ホムンクルス 6 (BIG SPIRITS COMICS)

ホムンクルス 6 (BIG SPIRITS COMICS)

まずは社長がやめなさい (文春文庫)

まずは社長がやめなさい (文春文庫)

この文庫本の親本は、四谷ラウンドから刊行されたもの。
四谷ラウンドといえば、『政治家の通信簿』や『中学生の教科書』シリーズ、『下町酒場巡礼』(現在、ちくま文庫)や『皆殺しブックレビュー』、兵頭二十八の著作を刊行していた、実にシブイ出版社。
また、解説は、元四谷ラウンド社長(現在市井文学代表)の田中清行氏。(田中氏の人となりについては、上原隆が『雨にぬれても』(幻冬舎文庫)「お金」で書いている)。